流産の原因を西洋医学・東洋医学で整理|脈診から考える流産と鍼灸|不妊鍼灸・妊活鍼灸の【そあら鍼灸院】東京新宿区

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妊活お役立ちコラム

2025/12/15

不妊鍼灸

流産の原因を西洋医学・東洋医学で整理|脈診から考える流産と鍼灸

「妊娠反応が出てとても嬉しいのですが、今度は流産に対する不安との戦いです。鍼灸で流産は予防できるのですか?」

そう尋ねられた患者様がいらっしゃいます。

一般的に35歳の流産率は約20%、40歳の流産率は約40%といわれます。

だからこそやっとの思いで着床までたどり着いたのに、流産してしまったら…。

多くの患者様は不安を抱えながら過ごされています。

では鍼灸で流産を予防することはできるのでしょうか?

流産の原因など西洋医学と東洋医学それぞれの観点から解説します。


  1. 1. 流産の原因-西洋医学的の考え-
  2. 2.東洋医学的な考え方
  3. 3. 脈と流産
  4. 4. 鍼灸治療でできること、著者の考え
  5. 5. 5回の流産を乗り越えてご出産されたAさん
  6. 6. まとめ



流産の原因-西洋医学的の考えー

流産してしまう原因は何なのでしょうか?

現在流産の原因は以下のものと考えられています。

  • ・染色体異常
  • ・子宮の形態以上
  • ・内分泌異常
  • ・免疫異常、血液凝固異常

などが考えられています。では1つずつ解説します。


染色体異常

流産の原因で最も多いものは胎児の染色体異常です。

日本産科婦人科学会では以下のように述べられています。

「妊娠12週未満の流産(早期流産)で、最も多い流産原因は赤ちゃんの異常です。流産した組織(将来胎盤になる絨毛組織)の染色体を調べると、約80%に異常を認めたと報告されています」



卵子と精子が出会い、受精してから細胞分裂を繰り返します。

この時に染色体が正しく配列しないことで、胚の染色体異常が発生します。

染色体異常は加齢とともに発生しやすく、胚の見た目だけでは判断できません。


子宮の形態異常

子宮の問題から流産を引き起こすことがあります。

例えば中隔子宮といって子宮の中心に壁のような中隔があり、子宮を二分していると流産の原因になります。

また、子宮筋腫の場所・大きさによっては流産を引き起こす可能性もあります。

流産の原因の1つの中隔子宮を説明する図


内分泌異常

甲状腺機能の異常や糖尿病は流産と関係します。

甲状腺はホルモンを作る器官の1つ。

様々なホルモンが甲状腺で作られます。

その中でも胎児の発育に関わるホルモンを分泌します。

そのため、甲状腺機能が低下していると流産を引き起こす可能性があり、逆に甲状腺機能が亢進していると胎盤の血流や胎児循環を不安定にさせてしまいます。

また、糖尿病の方も流産しやすいと言われています。

高血糖の状態は胎児のDNAや細胞を損傷し、血流不良になる上、胎盤の機能不全を引き起こします。


免疫異常・血液凝固異常

免疫異常とは自身の細胞を異物とみなして攻撃してしまう状態です。

流産の原因として挙げられるものは抗リン脂質抗体症候群。

細胞の外側である細胞膜はリン脂質が多く含まれています。

抗リン脂質抗体症候群があると炎症や血栓ができやすくなり、胎児に栄養がいきにくくなります。


東洋医学的な考え方

東洋医学的な考え方のイメージ図

では東洋医学では流産をどのように考えているのでしょうか?

東洋医学的に考える流産について解説します。


東洋医学で考える流産

中国の隋、唐の時代(日本では飛鳥時代)に『諸病源候論』という医学書が書かれました。

様々な病気の原因や症状が記されており、婦人科の病についても細かく記されています。

以下のような記述があります。

陰陽が相合して胎を得る。栄衛が調和し、気血が充足していれば胎児は安全であり、よく成長する。もし栄衛が失調し、気血が虚損し、さらに子宮に風冷の邪が客るようになれば、血気が不足して胎児を栄養することができなくなって、しばしば流産するようになる。妊娠期間中に常に腰痛がある者もよく流産する。

「栄衛」というのは東洋医学の用語で体内と体外それぞれ流れるエネルギーのことです。

エネルギーが調和し、身体を養う栄養が充実していれば胎児は健やかに成長しますが、エネルギーが乱れ、栄養が不足して風や冷えに身体がやられてしまうと胎児が栄養不足となり、流産に繋がると記されています。

妊娠12週より前の流産を東洋医学では「堕胎」、流産が3回以上続くものを「滑胎」といいます。

『医宗金鑑』という中国伝統医学書の婦科心法要訣には滑胎を

「原因もなくある時期になると流産する」

と記され、習慣性流産のことを説明しています。

堕胎・滑胎の原因には

  • ・生殖機能にかかわる「精」が充実していないため、胎児に力がない
  • ・食べ物の消化吸収などの関わる働きが弱く、エネルギーを作り出せない。
  • ・身体を養う血が弱く胎児が養われない
  • ・帯脈という経絡が弱く、胎児を留める力が働かない

などが考えられています。

専門用語が続いたので、補足をすると

東洋医学では人体が健康的に機能するために「気」「血」「精」などの基本的な物質・働きがあります。

簡単に言うと「気」は身体のエネルギー、「血」は栄養、「精」は成長や生殖に関わる物質・働きです。

経絡とは身体の隅々まで気・血・精が通る通路。

つまり上記にも述べたように東洋医学で考える流産の原因は婦人科にかかわるもののみとは限りません。

総合的にどのような状態なのかを考える必要があります。


脈と流産

ここからは専門的な内容となります。

脈診は東洋医学では中核的な技法で体の状態を知る重要な手がかりとされます。

『察病指南』宋の時代
『診家枢要』元の時代
『瀕湖脈学』明の時代
『診家正眼』明の時代

という脈の専門書があるので、その辺りを中心にまとめます。

 『瀕湖脈学』という本の最後に「四言挙要」という、宋代頃に成立したとされる、脈診を伝授するために四字句でまとめたものが載っています。
覚えやすい四字の句で簡潔にまとめたハンドブックのようなものです。

わざわざ数百年前の「四言挙要」を採録したのはそれだけ有用だからかもしれませんね。

そこには
「婦人の脈は、血によって根本とする。血が旺盛であれば妊娠しやすい。気が旺盛であれば妊娠しにくい。」
とあります。

一言でいうと、女性と血、妊娠と血はとても関係が深いということです。


そして流産についての記述に、血との関係性がみられる脈がいくつも出てきます。

それら直接流産について言及している脈を一つづつ、先に挙げた「脈書」からまとめます。


濇脈(しょくみゃく)

濇脈とは流れの滞っている脈です。

血が少なく痛みを現わす脈となります。

妊娠中に濇脈が現われると、また腹痛で、下腹部が重く、出産しそうな感じをともなう状態。

また左手首の一番肘寄り(薬指に当たる場所)に濇脈が出ると、血が赤ちゃんをを養うため、赤ちゃんを養う力が十分でなく妊娠が安定しないといわれます。


弦脈(げんみゃく)

弦脈とはギターの弦のように硬い脈です。

弦脈が現われていると血を体に貯蔵するとこができず、胎児は保つことができないといわれています。


革脈(かくみゃく)

私たちは脈を診るときに軽く触れたり、指を沈めたり様々な脈の浅さ深さをみています。

ここで記されている革脈とは指を浮かせてみるとき、表面が太鼓の皮のようにピンとはった脈です。

寒と虚があるときに現われ、子宮出血や流産になるといわれます。

大量の出血がある時に出る脈です。

身体のエネルギーとなる気、栄養に関わる血が不足して冷えている状態と考えられます。


散脈(さんみゃく)

散脈はばらばらでまとまらないような脈です。

長患いをしたときなどに現われる気血ともに虚の脈で、出産する婦人がこの脈が現れるのは生き、妊娠中の婦人がこの脈が現れるのは流産するとされています。

予定日を過ぎても出産の兆候がない時に相談を受けることがありますが、出産を促進するために散脈になるような鍼をします。

そのため妊娠中には赤ちゃんがお腹の中にいなくてはならないので、妊娠中の脈(滑脈)になっていることが重要となります。

体の状態と脈の状態が合っていることが、東洋医学では重要だということです。


鍼灸治療でできること、著者の考え

流産経験のある著者
著者自身流産の経験が2回あります。

1度は経過が順調だったところから11週の健診にて突然の流産。

2度目は胎嚢確認の段階から成長が遅く、少々覚悟してからの流産。

どちらの時も妊娠中に何かできることはなかったのか考え尽くしましたが、妊娠してから私が何かしたから流産という訳ではなく、私自身の身体も赤ちゃんも妊娠を維持できる状態ではなかったと悲しみながらも気付きました。

ドラマでは転倒などの衝撃で流産という描写がありますが、そのような原因での流産というのは相当稀だといわれており、妊娠後の行動が流産の原因というケースはほとんどないと考えられています。

東洋医学的に月経・妊娠・流産を振り返ると、身体は複数の臓器が相互に関わりながら月経を起こし、妊娠へ至ることがわかります。

一方で、染色体異常など、鍼灸では対応できない領域も存在します。

そのため、「○○をすれば流産を防げる」というものではなく、身体全体を整える総合的なケアが必要になります。

当院では2011年~2025年10月までで

妊娠報告(胎嚢確認)人数1540人のうち流産の報告を受けた人数が260人でした。

ただし未報告の例もあるはずなので、実際はもっと高いと考えます。

元気な卵子と精子から生命力のある胚が育ち、赤ちゃんにとって心地よい子宮環境を備えておくことが重要です。

妊娠してからではなく、妊娠「前」からの準備が大切だと考えています。


5回の流産を乗り越えてご出産されたAさん

Aさんは30歳代の時に当院の初診を受けられました。

すでに複数回の流産を経験しています。

2回目の流産の後に不育症の検索を受けますが、特に問題は見られず。

そして何度目かの妊娠の際に中隔子宮が分かり、その後流産してしまいました。

中隔子宮の手術も終わり、今は人工授精の結果を待ち。

流産しないためだけでなく、夜眠れない、歯ぎしり、疲れやすいなどの症状も改善したいということで当院に来院しました。

流産というのは身体に大きなダメージを残します。

Aさんは何度も流産と手術を経験しているので身体にダメージが残っていました。

脈は力がなく、濇(ショク)脈といって冷えを表す脈をしていました。

そして、当院の初診を受けた後、妊娠反応は陽性となりましたが、心拍確認ができずに流産。

中隔子宮の手術をした後の流産にショックを受けていました。

Aさんは再度不育症の検査を希望しましたが、1項目グレーゾーンがある程度で何かはっきりした結果はでませんでした。

それからは身体作りに専念しながら人工授精を続けることになりました。

体外受精も視野に入れてはいましたが、妊娠はできているので必要ないとのことでした。

何度か人工授精をしますが、流産どころか着床に至らないことに焦りを感じるように。

その後流産後、4回目の人工授精で無事に着床。

でも怖くて仕方がないAさんはひたすら耐える日々です。

心配をしながら心拍確認を経て安定期に入りました。

途中少量の出血があり、安静指導を受けることもありましたが、2週間に1回のペースで鍼灸治療を臨月直前まで続け、無事にご出産されました。

Aさんはいわゆる原因不明の不育症と考えられます。

当院に通われてすぐに流産されましたが、身体の回復につとめ、コツコツと鍼灸治療を継続して子宮環境を整え、エネルギー溢れる卵子を育て、ご出産に至りました。

何度も流産を経験したなか、ご出産された周期は新しい治療法や服薬などは一切ありませんでした。

お身体作りの大切さを教えてくださった事例と考えています。


まとめ

ここまで東洋医学で考える月経・妊娠・流産を振り返ると人の身体は様々な臓器と関わりながら月経がおき、妊娠することが分かります。

そのため「○○をすれば流産防げる」というよりは、お身体の総合ケアが必要となります。

それは妊娠してからではなく、妊娠の前から。

妊娠前から身体と脈が合うようにすると良い。
(脈と症状・状態が合う、脈と季節が合う体)

そうすることで妊娠と関係が深い「血」が充実した状態を整えることができ、妊娠しやすい脈・お腹、妊娠後も安定しやすい身体になると考えられます。

参考文献
『現代語訳 黄帝内経素問』〔中巻〕 東洋医学出版社
『全訳 中医婦人科学』 たにぐち書店
『新版漢方鍼医基礎講座』
『察病指南』
『診家枢要』
『瀕湖脈学』
『診家正眼』

初出:2025年12月13日


この記事の著作者

鍼灸師 あんまマッサージ指圧師 楠本 敦子

「東京漢方鍼医会」会員

より詳しい内容はこちらをクリックしてご覧ください。

この記事の著作者

院長 鍼灸師 あんまマッサージ指圧師 松本 敏樹

東京漢方鍼医会 代表
不妊カウンセリング学会 認定不妊カウンセラー
臨床分子栄養医学研究会 認定カウンセラー
一般社団法人「日本生殖医学会」会員

より詳しい内容はこちらをクリックしてご覧ください。
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