妊活お役立ちコラム
2024/01/25
不妊治療解説
卵管閉塞(卵管の詰まり)・卵管狭窄の原因・治療法|卵管障害改善後の妊娠例
毎周期排卵に合わせてしっかりタイミングをとっているのに、妊娠しないことが続くと「何か原因があるのかな?」と不安になってしまうかもしれませんね。
不妊の原因は多岐にわたりますが、そのひとつに「卵管が閉塞している」というものがあります。
何らかの理由で卵管の通りが妨げられると、自然妊娠が難しい状態となります。
ここでは卵管障害の原因や、影響、検査や卵管の通りを良くする治療法について解説します。
原因や解決法が分かることで時間を無駄にすることなく、妊活を進めることができます。
- 1卵管とは
- 2卵管閉塞・卵管狭窄とは?
- 3卵管閉塞の検査
- 4卵管閉塞の治療法
- 5ピックアップ障害とは
- 6卵管閉塞と体外受精
- 7事例
- 8まとめ
もくじ
卵管とは
子宮と卵巣をつなげている管を卵管と呼びます。
卵管は、卵巣から排卵された卵子と精子の通り道であり、出会って受精する場所です。
このほかにも、
- ・受精卵を発育させる
- ・排卵された卵子のピックアップ
- ・受精のための最適な環境の維持
- ・着床までの受精卵の保護・栄養・輸送
などをおこないます。
卵管は、妊娠成立に重要な役割をはたしています。
卵管閉塞・卵管狭窄とは?
卵管が何らかの理由で詰まることを卵管閉塞、狭くなることを卵管狭窄といいます。
卵管が閉塞もしくは狭窄してしまうと…
- ・卵子と精子が受精できなくなってしまう
- ・受精はできても受精卵が子宮までたどり着けず着床できない
そのような状態になると妊娠しづらくなってしまうのです。
卵管閉塞の原因
卵管閉塞・狭窄の主な原因として、
- ・性感染症の一つであるクラミジア感染症
- ・子宮内膜症
- ・腹腔内の炎症による卵管周囲の癒着
などが挙げられます。
クラミジア感染による卵管閉塞・狭窄について
性交による感染後、放置すると子宮頸管炎に始まり腹腔内へと進展し、子宮付属器炎(子宮内膜炎、卵管炎、卵巣炎)や骨盤内炎症性疾患(骨盤腹膜炎、肝周囲炎)も発症します。
クラミジアによる繰り返す炎症により卵管内腔や卵管周囲に癒着が生じたり、卵管閉塞や卵管狭窄などが生じます。
一般的にクラミジアによる症状は、帯下(おりもの)増量、不正出血、下腹痛などと言われておりますが、感染しても多くは無症状です。
子宮内膜症による卵管閉塞について
子宮内膜症とは、通常は子宮の中だけに存在するはずの子宮内膜が、卵巣や子宮の表面、臓器を包んでいる腹膜に出来てしまう病気です。
子宮内膜症での炎症は、月経痛、慢性骨盤痛、性交痛、排便痛などの痛みが出やすくなります。
また、子宮や卵巣、腸、膀胱などの周りの臓器との間に癒着を形成してしまいます。
この癒着が原因で卵管が閉塞してしまいます。
腹腔内の炎症による卵管周囲の癒着
まれに、虫垂炎など骨盤内の手術を受けた経験がある方にも、卵管周囲の癒着をきたして閉塞や狭窄が起きていることがあります。
卵管閉塞の症状
卵管閉塞は、自覚症状がなく無症状なことがほとんどです。
タイミングを取っていても中々妊娠しないことが続き、婦人科へ受診・検査した際に発見されることが多いです。
卵管閉塞の割合
2003年に日本生殖学会が行なった不妊治療患者によるアンケート調査では、男性因子33%、卵巣因子21%、卵管因子20%、子宮因子18%、免疫因子5%、その他4%であったとしています。
他の文献には、女性側の不妊症の原因の中で、卵管因子は女性全体の31.2%を占めているという記載もみられます。
末岡浩(2007)『不妊因子の種類と診断 卵管閉塞・卵管周囲癒着』
日本生殖学会『生殖医療ガイドライン』
また、卵管因子の中で卵管閉塞が起こる割合は、30〜40%とあります。
メディックメディア出版『病気がみえる vol.9 婦人科・乳腺外科 第3判』
女性側の不妊の原因の中で、卵管閉塞による不妊は割合が多いと言われています。
卵管閉塞の検査
卵管が通っているかどうかを調べる検査に、子宮卵管造影(HSG)があります。
甲状腺の疾患や、造影剤に対するアレルギーがある方に対して、造影剤が使用できない場合は、卵管通水・卵管通気(簡便な検査)が行われます。
子宮卵管造影(HSG)について
子宮内に造影剤と呼ばれる検査薬を子宮腔から卵管へと注入します。
子宮の形態と卵管のつまりや形状、骨盤内癒着を観察する検査です。
これにより、卵管が詰まっていないかどうか、子宮の中の形に異常がないかどうかを調べます。
この造影剤の流れをレントゲン透視で観察し、最後にレントゲン撮影をします。
HSGでは、卵管閉塞、卵管狭窄、卵管留水腫、卵管周囲の癒着などの卵管の異常や、閉塞部分の位置がわかります。
しかし卵管の内側にある繊毛や卵管采などの細かい部分の異常はこの検査ではわかりません。
両側の卵管閉塞部を造影剤で押し広げながら通過することにより、卵管の通りが良くなるため、検査後に妊娠率の上昇が認められています。
卵管通気・通水検査
子宮卵管造影と同様に、卵管がつまっていないか、正常に通っているかどうかを調べる検査です。
通気検査では、子宮口より一定の圧力で炭酸ガスを注入します。
ガスが卵管から腹腔内に出ていくときの圧力を測定して、卵管が通っているかどうかを見ます。
通水検査では、子宮口から生理食塩水を注入し、子宮腔から卵管へと通して腹腔から流れ出るかどうかを調べます。
卵管通過障害や卵管形成術後の癒着防止のためなど、治療を目的として行われることが多くなっています。
どちらも子宮や卵管の形、卵管閉塞がどの部分で起こっているのかは、子宮卵管造影検査ほど詳しくはわかりません。
腹腔鏡検査
腹腔鏡検査とは、骨盤内の臓器を直接見るための直径3mm、長さ20cmほどの望遠鏡のような医療機器を用いて腹腔内から卵管などの臓器を直接観察できる検査です。
この検査で、子宮や卵巣などの骨盤内臓器の状態が確認でき、卵管・卵管采の異常、子宮内膜症や卵管周囲の癒着などの不妊の原因がわかり、同時に治療を行うこともできます。
卵管閉塞の治療法
卵管因子による不妊は、卵管機能を障害している原因に対する治療が可能であれば、自然妊娠が望めます。
- ・薬物療法
- ・手術療法
などがあります。
薬物療法
卵管閉塞の原因として性感染症が疑われる場合、抗生剤を用いて治療します。
クラミジア感染症などの性感染症は、性交渉で感染するため必ずパートナーと同時に治療する必要があります。
しかし、薬物療法は、既にある卵管閉塞(卵管狭窄)や癒着を解消するものではありません。
手術
卵管閉塞・狭窄や卵管周囲の癒着、卵管留水腫などにより卵管機能を障害する病態に対して、
- ・卵管閉塞(狭窄)を解消する「卵管形成術」
- ・卵管周囲や卵管采周囲と他臓器との間の繊維組織をはがす「癒着剥離術」
- ・癒着した卵管采に切開を加えて卵管を開口し、再閉塞防止のために切開部を翻転させ縫合する「剥離卵管開口術」
この手術により、卵管閉塞(卵管狭窄)や癒着を解消することができます。
卵管閉塞に対して
子宮卵管造影検査(HSG)や通水・通気検査で片側あるいは両側の卵管閉塞、または高度の狭窄所見が卵管の子宮に近い位置で確認された場合、卵管鏡下卵管形成術(FT:Falloposcopic Tuboplasty)で卵管の閉塞を解消することができます。
何らかの原因で卵管が狭窄や閉塞し通過障害があるため卵子と精子が出会えないことにより自然な受精ができない場合、卵管鏡(内視鏡)とバルーンカテーテルを用いて卵管の狭窄部・閉塞部を拡張し通過(疎通)性を回復させるための内視鏡手術です。
術後の痛みや出血も殆どなく傷も残らない身体への負担が少ない低侵襲な治療法です。
卵管采に問題がある場合
卵管采とは、卵管の先端にあるイソギンチャクの触手の様な形をしていてるラッパ管です。
卵巣から排卵された卵子を卵管内に取り込む(ピックアップ)大切な役割を持っています。
子宮内膜症や腹膜炎による卵管采周囲に癒着があり場合や、卵管采部が癒着により閉塞すると、卵管采の動きが障害されてしまい、卵子のピックアップが出来なくなってしまったり、着床の妨げになってしまいます。
ピックアップ障害とは
ピックアップ障害とは、排卵された卵子を卵管采がうまくキャッチできないことによって、精子と卵子の受精の場が得られないことを指し、治療方法としては体外受精が適応されます。
ピックアップ障害の原因
ピックアップ障害の原因は、卵管の炎症や子宮内膜症などによる癒着、卵管留水症(卵管の中に分泌液が溜まって卵管が拡張した状態)などがあります。
しかし、検査をしても異常がなく原因不明の場合もあります。
卵管閉塞と体外受精
原因に対する治療が難しい場合や、他の因子や年齢を考慮して原因に対する治療を行わない場合、人工授精は卵管が機能することを前提としているため適応とならず、治療方法としては体外受精が適応されます。
事例
当院に来られた方にこんな方がいらっしゃいました。
この方は元々生理痛がひどく、20代の時に病院に行ったところ子宮内膜症(子宮以外の場所に子宮内膜組織ができてしまう病気)と診断されていました。
ピルを処方され、生理痛は軽減していましたが、結婚を機にピルをストップ。
ピルを止める事で再び生理痛が出てしまうかもしれない不安もありながら、妊娠に向けての身体づくりのために当院に来られました。
最初のうちは、生理が始まる前からシクシクと痛み始め、生理が始まるとともに痛みが強く出ていました。
鍼灸治療を始めて2〜3ヶ月経つと生理前の痛みがとれていき、生理痛も以前の痛みより軽減していったのです。
「以前はベッドから起き上がれないくらい生理痛が強かったのですが、今は全然違う!!生理の時でも動けて嬉しい。生理痛の不安が減って心が軽くなりました」
少しずつ身体が変わることで、体調が良くなっていき、その変化が嬉しいとおっしゃっていました。
きちんと定期的に通っていただいていたので、少しずつ妊娠しやすい身体へと変化していきました。
しかし、一向に陽性反応が出なかったのです。
初診の際に「通水検査はしたが問題なかった」とおっしゃっていたので、卵管は通っているはず。
そうなると、もしかしたら卵子のピックアップがうまくいっていないのではないかとお伝えしました。
その方はその話を聞き、いつも通院している病院の医師に相談してみたそうです。
担当医師もなぜ妊娠しないのか疑問に思っていたそうで、「以前、子宮内膜症もあったので、腹腔鏡検査してみてもいいかもしれない。」と、とんとん拍子で話が進んでいきました。
いざ腹腔鏡検査をしてみると…
子宮内膜症が広範囲に広がり、ひどく癒着を起こしていたそうです。
そのせいで、左卵巣の癒着+左卵管の入り口が狭くなっている。
右の卵管采がくっついてしまっている状態でした。
この状態だと、卵管の入り口が狭くなっているため受精が難しく、卵子のピックアップもうまくいっていなかった可能性があります。
検査中に処置をしてもらい、無事に検査兼治療は終了。
そして検査後2回目の人工授精で、無事妊娠する事ができたのです!
ご本人としても腹腔鏡検査後での早めの結果だったので、驚きながらも嬉しそうな顔で「腹腔鏡検査を行ってよかった。検査を行うキッカケをつくっていただき、感謝しかありません。本当にありがとうございました」とおっしゃってくださいました。
まとめ
子宮卵管造影や通水検査・通気検査は体験ブログなどに「すごく痛かった」と記載されることも多い検査です。
また、事例でも紹介したように子宮内膜症による癒着も卵管閉塞の原因になります。
癒着による閉塞を知るためには、腹腔鏡検査をする必要があり、これらの検査を受けること自体に悩んで躊躇してしまう方もたくさんいらっしゃいます。
しかし、タイミングや人工授精で早く授かりたい方にとって、検査して卵管閉塞の原因を知ることで妊活を効率的に進められる可能性があります。
今現在、卵管閉塞に悩まれている方にこの記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
■■【妊娠しやすい身体づくりの方式と不妊鍼灸3本柱】◆◆
数万例超の臨床実績から導き出した方式
〔①不妊鍼灸3本柱×②不妊カウンセリング×③おうち妊活〕
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