妊活お役立ちコラム
2023/08/17
不妊治療解説
排卵誘発剤として使われるレトロゾール(フェマーラ)錠の効果と副作用
本記事では、薬剤師の立場からレトロゾール(商品名フェマーラ。以下フェマーラと記載します)について解説しています。
不妊治療中にフェマーラを処方された方の疑問や不安が少しでも解消されることを期待しています。
もくじ
レトロゾール(フェマーラ)とは
フェマーラは元々、閉経後乳がんの治療のために開発された医薬品です。
2022年4月に不妊治療に対する保険適応が開始されたことに伴い、現在では、排卵誘発・卵巣刺激の目的で使用した場合でも保険適応となっています。
フェマーラの効果
フェマーラはアロマターゼという酵素に働き、その働きを妨げるアロマターゼ阻害薬です。
アロマターゼとは、エストロゲンを作るために必要なとても重要な酵素です。
この酵素の働きを弱めることで作られるエストロゲンを効率的に減らすことを目的に作られました。
抗がん剤が不妊治療に使われるなんて何か怖い、、、。
と思う方がいるかもしれませんが、フェマーラはがん細胞に直接作用するわけではありません。
乳がんの治療に使われる場合、がん細胞が増殖するために必要なエストロゲンを減らすことで、乳がん細胞の増殖を抑えるという働きをします。
一般的に抗がん剤と言うとがん細胞を直接攻撃するタイプの薬のイメージが強いので怖いと思うかもしれませんが、フェマーラは全く違う働きをするので、生殖機能が損なわれるということもありません。
フェマーラはなぜ乳がん治療において“閉経後”限定なのか。
本題からは脱線してしまいますが、乳がん治療において、なぜ“閉経後”に限定されているのかというとについて少しだけお話します。
これは閉経の前と後ではエストロゲンが作られる場所が違うためです。
閉経前は卵巣からエストロゲンが分泌されますが、閉経後は卵巣からのエストロゲン分泌はほとんどなくなります。
その代わり副腎というところから分泌されるアンドロゲン(男性ホルモンです)にアロマターゼが作用することでエストロゲンに変化します。
フェマーラは、このアンドロゲンからエストロゲンに変化する働きを抑えるように働きますが、卵巣からのエストロゲン分泌を抑える作用はないため、閉経前の乳がんの治療には効果が期待できないということになります。
・排卵誘発剤として使われるフェマーラの作用
フェマーラを排卵誘発剤として使う場合は、短期間で使用するというのがポイントです。
フェマーラを短期間服用することで、一時的に女性ホルモンであるエストロゲンが低下します。
すると、脳下垂体からのFSH(卵胞刺激ホルモン)の分泌が増加します。
また、卵巣内では男性ホルモンが増加することでFSH受容体が増加します。
この両方の作用によって、卵胞の発育が促進されます。
・フェマーラの副作用・安全性は?
フェマーラを排卵誘発剤として使う場合、服用期間が短いこともあり、副作用の発現頻度はそれほど高くありません。
頭痛が現れることがありますが軽度であることが多く、だんだん慣れてくるので軽い頭痛の場合は服用を続けてください。
眠気が現れることがあるので、念のため車の運転等には注意してください。
稀ですが、卵巣刺激症候群(卵巣腫大、下腹部痛、下腹部緊迫感、腹水、胸水、呼吸困難を伴う場合有り)
が報告されているので、フェマーラ服用後急な体調不良が現れた場合は医師に相談してください。
PCOSに対するレトロゾールの有用性
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)は、卵巣内の男性ホルモンが上昇することにより、排卵がうまくいかず、エコーでみると卵巣内に10mmほどの卵胞がたくさん確認できることからこの名前が付いています。
治療としては排卵誘発剤を使用し、排卵を試みます。
PCOSの方の排卵誘発の方法としては、フェマーラを第一選択としている病院も増えています。
以前は排卵誘発剤の内服薬として最も多く使われていたのはクロミッドでしたが、(クロミッドは1錠93.9円フェマーラは268.8円とクロミッドの方が安い)不妊治療の保険適応の影響もあり、フェマーラの使用が増えています。
また、フェマーラの方が体内に残る時間が短いので、自然周期に近い状態で排卵誘発が行えるというメリットもあります。
せ型PCOSの方への提案
現在では、海外では肥満型のPCOSが多く、日本では痩せ型のPCOSが多い事が分かっています。
当院でも
「痩せればPCOSは改善するとよく聞きますが、太っていない場合はどうすればいいの?」
こう嘆く方はとても多かったです。
痩せ型でPCOSの方は運動をお勧めします。
痩せ型PCOSの方への提案。運動で筋肉をつけPCOSを改善する!
PCOSの原因は肥満と言われますが、日本人のPCOSは痩せ型の方が多いです。インスリン抵抗性がPCOSの原因の1つと言われています。痩せていても筋肉が少ない・異所性脂肪が原因でインスリン抵抗性が生じます。運動してPCOSを改善しましょう!
レトロゾール(フェマーラ)周期
1日1回2.5mgを月経3日目から一日一回一錠(2.5mg)を5日間経口投与します。
効果が不十分な場合は、次周期以降一回二錠(5mg)に増量されることがあります。
フェマーラを使うと黄体機能の補助になると考え使用しているクリニックもありました。
また採卵においてフェマーラのみの誘発だと、主席卵胞1つと、その他小さい卵胞がいくつかが育つこともあります。
採卵周期にレトロゾールを処方して、他に育っている小さい卵胞も採卵する方法をベースとしているクリニックもあります。
フェマーラを使うと黄体機能の補助になると考え使用しているクリニックもあります。
また他のクリニックでは
「フェマーラは小さい卵胞からでも、成熟卵が比較的採れやすくなる」
とのこと話しているDr.もいらっしゃいました。
徐々に採卵周期にフェマーラが処方されるクリニックも増えてきたように感じます。
まとめ
突然ですが、薬には半減期というものがあることをご存じでしょうか。
これは、薬が体内に取り込まれた後、血中の濃度が半分になるまでに必要な時間を表します。
短ければ短いほど、体内からなくなるのが早いというわけです。
経口の排卵誘発剤として最も使用頻度の高いクロミッドの半減期は5〜7日。
対してフェマーラは42時間前後です。
これは、フェマーラの方が医薬品の影響を受ける時間が短いということを示すので、自然周期により近いと言えるでしょう。
2022年4月に不妊治療に対する保険適応が開始されたことに伴い、不妊治療を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。
フェマーラも保険適応以前から不妊治療において排卵誘発剤として使用されていましたが、保険適応により金銭的な負担が軽減され使用頻度は増加傾向であり、今後ますます使用されることが予想されます。
このことは金銭的な面だけでなく、身体への負担を考えても歓迎できる点であるといえるでしょう。
不妊治療の保険適応については賛否両論ありますが、今回の記事が不妊治療に取り組まれる方のお役に立てれば幸いです。
< 参考文献 >
フェマーラ錠2.5mg(pmda.go.jp)
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/4291015F1026_1_08/
聖マリアンナ医科大学病院生殖医療センター
https://www.marianna-u.ac.jp/hospital/reproduction/feature/case/case03.html
クロミッド錠50mg(pmda.go.jp)
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2499009F1080_2_07/?view=frame&style=XML&lang=ja
親愛レディースクリニック
https://www.sinailc.com/column/pcosの治療戦略@(フェマーラの有用性)/
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