妊活お役立ちコラム
2024/06/20
不妊治療解説
採卵の痛みは軽減できる?痛みの理由や和らげる取り組み。
「保険適応となって体外受精を考えているが、採卵って痛いだろうからステップアップするのを迷うな…」
「移植うまくいかなかったから、もう一回採卵からスタートか。採卵痛いから憂うつだな」
「何回もうまくいかないので、転院を考えてる。○○病院がいいけど、この病院は採卵時無麻酔だから不安しかない」
体外受精を考える上で「採卵=痛みが強い」と考えている方が多い傾向にあります。
そんな痛みに対して不安を抱え、採卵に不安を抱えている方も多いのではないかと思います。
今回は、採卵をする上での痛みポイントや採卵時の痛み軽減方法など少しでも不安が軽くなるよう紹介させていただきます。
もくじ
採卵とは…
採卵とは排卵の直前に経膣的に卵巣から卵子を体外に取り出す方法です。
卵子は卵胞という膜に包まれていて、卵巣の中にいます。
この中から1周期に1回、1つの卵子が成長するので、それを人工的に採取する手技となります。
採卵の手順
誘発方法
採卵は良好な状態で、採れるかがポイントとなります。
病院によって誘発方法や誘発をする際の刺激量が違い、それによって採卵できる卵子の数が変わってくるのです。
卵胞の大きさとホルモン値を測定し、卵の成熟の度合いを確認して採卵日を決定します。
具体的には、卵胞の大きさ(18〜20mm程度)、女性ホルモン(E2エストロゲン)の値、尿中のLH(黄体化ホルモン)の値を考慮して最適な採卵日を決めていくのです。
採卵日が決まったら
・点鼻薬(スプレキュア・ブセレリンなど)
・hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)を注射
をして人為的にLHサージを起こし、卵子を成熟させ、排卵を促します。
一般的に、点鼻薬やhCG注射をして約34から40時間以内排卵するといわれています。
採卵を行う時間から逆算して「○月○日の○○時に点鼻(注射)してください」と指示を受ける場合が多いです。
洗浄・麻酔
採卵前に、感染を予防するために外陰部や膣内を洗浄します。
その後、麻酔という流れとなります。
麻酔は、採取する卵子の数や通院されている病院によって変わります。
一般的に
- ・無麻酔
- ・痛み止め(坐薬)
- ・局所麻酔
- ・静脈麻酔
どれかで行うことが多いです。
(静脈麻酔の場合は、先に麻酔をしてその後に洗浄となります)
採卵
経腟超音波検査(エコー)を行って排卵していないことが確認できたら、一般的には左右両方の卵巣から採卵を行います。
経腟超音波で卵胞を写し出し、採卵針を用いて卵胞を穿刺し、卵胞内に入っている卵胞液を吸引すると同時に卵子を採取していくのです。
採取された卵胞液と卵子は培養士のもとへ運ばれ、卵子を採っていきます。
ここで初めて採卵の数がわかるのです。
採卵の痛みについて
採卵の手順を確認しても、1番不安なところとして「痛いかどうか」だと思います。
患者さんの話からどんな場面で痛みが起こりやすいのか、お伝えします。
洗浄
採卵の前に、感染症予防のために外陰部と膣内を生理食塩水や消毒液を流して十分に洗浄します。
腟分泌物を除去するために腟を広げながら奥まで洗浄するため、痛みや違和感を感じることがあります。
麻酔
痛み止め(坐薬)に関しては、痛みまで出る事は少なく違和感程度となります。
静脈麻酔は腕に、局所麻酔は膣内に注射を打つのでそれによりチクッと痛みを感じる方もいらっしゃいます。
(局所麻酔でもスプレーの場合は痛みを感じないケースもあります)
また麻酔をする際にエコーで腟壁を圧迫するときに痛みを感じることがあるようです。
病院によってはその静脈・局所麻酔を打つ前に、表面麻酔を施し感覚を鈍くしてから行う事もあるため、痛みを感じない場合もあります。
採卵時の痛み
麻酔の有無や種類によって感じ方は様々です。
「静脈麻酔で眠っていたので、全く痛くなかった」
「局所麻酔(無麻酔)でも思ったよりも痛くなかった」
という方もいれば、
卵子を採取する際に「吸われるような痛みがあった」という方もいらっしゃいました。
痛みがあった方に詳しく聞いていくと、注射のような痛みとはちょっと違う痛みで、鋭い痛みとおっしゃってました。
無麻酔だと採卵する卵子の数も少ないため、5分程度の短時間で終わり、痛みが出てもすぐに落ち着いたという方も多かったです。
病院によっては痛みをグラフにしているところもあり、受ける前の痛みのイメージと実際採卵した後で痛みで比較していました。
こちらも参考にされてもいいかもしれません。
無麻酔採卵について 〜何個くらいまで無麻酔でいけるのか〜
今育っている卵胞の数によって麻酔をするかどうか、また麻酔の種類を変更している病院もあります。
一般的に採卵数が1〜3個の場合は無麻酔や鎮痛剤(坐薬)、4〜10個は局所麻酔、15個以上は静脈麻酔を用いる場合が多いです。
しかし、私の患者さんで6個無麻酔で採った方もいます。
不安が強い場合は、病院に伝えたら麻酔の種類を変えてもらえるケースもあるので、相談してみるのもいいと思います。
採卵の痛みを和らげる方法や工夫
病院によってですが、卵巣の状態や患者さんのご希望に合わせて、麻酔や痛み止めを用います。
麻酔のメリットデメリット
麻酔は局所麻酔と静脈麻酔があります。
【局所麻酔】
針が腟壁に刺さる痛みを緩和するために腟壁に局所麻酔薬を注射する方法。
メリット:
麻酔時間が全身麻酔よりも短く、身体の負担も少ない。
早めに帰宅できる。
全身麻酔よりも費用が安い。
デメリット:
時には圧迫する時に痛みを感じることもある。
【静脈麻酔】
静脈麻酔は静脈に鎮静薬を注入する方法。眠った状態で採卵が行われ、ほとんど痛みがないといわれています。
メリット:
痛みが最小限で安心して受けられる。
デメリット:
局所麻酔よりも費用がかかる。
数時間の安静が必要。
麻酔後遺症によって頭痛・嘔吐などがある場合がある。
アレルギー反応を起こすことがある。
点滴部位の腫脹・頭痛が現れることがある。
痛み止めの座薬(ボルタレン坐薬)
採卵をする前に鎮痛剤の坐薬をいれます。
腟壁はもともと痛みを感じにくく、穿刺する卵胞が3〜4個までであれば鎮痛剤のみで十分なケースがほとんどです。
点滴を行う必要もなく、術後は比較的スムーズにご帰宅可能です。
細い針を使用する
加藤レディースクリニックさんのように細い針を使い、痛みを少なくしている病院もあります。
私たちは採卵針の独自開発を行い、以前の採卵針(17ゲージ≒外径1.46mm)に比べて細い採卵針(21ゲージ≒外径0.81mmまたは22ゲージ≒外径0.72mm)を用いることにより、痛みを抑えられるようになりました。
また、針の先端部分の刃は特殊な加工をしており、組織へのダメージを最小限に抑えるように工夫されています。
この採卵針は痛みが少なく出血も軽度なため、全身麻酔をせずに採卵をすることが可能です。そのため、採卵終了後は15分ほど安静にしていただくのみで当日帰宅が可能です。
一般的には、18G(外径約1.2mm)前後の採卵針が使用されることが多いです。
細い針を使用する病院は、それよりも径の細い21G(外径約0.8mm)の採卵針を使用しています。
通常より採卵針を2/3の細さにすることにより、採卵時の痛みが少なく、また出血量も減少することで、より安全な採卵が可能となります。
その他の工夫
痛みの感じ方は人それぞれですので、同じ処置をしても「思ったより痛くなかった」という方もいれば「想像以上に痛かった」と感じる方もいらっしゃいます。
普段より痛みに弱いという自覚がある方は、病院で事前に相談するのがいいかもしれません。
「針を刺す」と想像しただけでも不安に思ってしまうのは当たり前です。
そんな方へ、少しでもその痛みを感じにくくする方法が「呼吸法」です。
1.少しでも身体の緊張が緩む、楽な姿勢を見つける。
2.ゆっくりと呼吸をする。(吸うと吐くを1:2くらいに吐く時間を長くできたらベスト)
ポイントとしは、呼吸だけに意識を向けて痛みや他のことは考えないようにすることです。
ぜひ実践してみてください
採卵後の過ごし方
採卵後は病院にてしばらく安静にした後、術後の体調に問題がなければそのままご帰宅という流れとなります。
麻酔が切れてくると鈍痛のような重い痛みが出る方もいらっしゃいます。
採卵当日は車の運転、激しい運動や性交渉は避け、湯船には浸からずシャワー浴で済ませるようにしましょう。
痛みはいつまで続くのか
採卵後もしばらく痛みが続くことがあります。
2〜3日すると少しずつ痛みは引いてきますが、痛みがある間は鎮痛剤を服用しても構いません。
痛みが引かず強くなる場合は、卵巣内や腹腔内の出血、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)、骨盤内感染症が起こっている可能性があります。
この場合はすぐに病院へ連絡した方がいいかもしれません。
まとめ
今回、採卵までの痛みのポイントや麻酔の種類、痛みの軽減方法など説明させていただきました。
採卵を控えている方が少しでも不安なく受けられるよう参考にしていただけたら幸いです。
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