妊活お役立ちコラム
2024/08/28
不妊治療解説
TRIO検査(エンドメトリオ)ERA・EMMA・ALICEによる着床不全検査
「良性胚と言われた受精卵を繰り返し移植するけど陽性が出たことがない。このまま採卵と移植続けていてもうまくいかない気がして不安が募る。」
「PGT-Aをクリアした受精卵。それだけ大事な受精卵だから、万全な子宮環境で迎えたい。子宮環境がわかるトリオ検査をした方がいいのか悩む。」
体外受精で赤ちゃんを授かるためには、卵子の質、胚の質が重要であることは、よく知られています。
しかし、最近では胚を受け入れる子宮環境にも注目が集まっています。
子宮内膜の厚さだけでなく、子宮内に炎症はないか。またやラクトバチルスなどの良い乳酸菌がどれだけいるのかなど子宮環境をいかに良くしていくかも重要視されてきています。
子宮内が着床しやすい状態なのかを調べる方法の一つ、トリオ検査。
今回トリオ検査によってその後の着床率や妊娠率に変化が出るかなど解説していきます。
トリオ検査とは
トリオ検査は、子宮内膜の状態を解析する3つの検査(ERA・EMMA・ALICE)をまとめものとなります。
トリオ検査の目的
これらの検査で、
1.妊娠に必要な「着床の窓」
2.妊娠に最適な「子宮内フローラ」を調べることができ、着床や妊娠率を向上させることを目的として行います。
子宮環境についてはこちらで詳しく解説しています。
子宮内フローラ検査(子宮内細菌叢検査2) ラクトバチルス菌の割合
妊娠するためには子宮環境も重要となっております。子宮内膜の厚さ以外にも着床を阻害するものについて明らかになったものがあります。その一つが子宮内フローラ。どう影響するか解説します。
ERA(子宮内膜着床能)検査(Endometrial Receptivity Analysis)
子宮の内膜は、一定サイクルで胚を受け入れるための準備を行います。その中で胚にとって最も着床しやすい環境が整う期間のこと「着床の窓」と呼びます。
この着床の窓には個人差があります。
ERA検査ではご自身の「着床の窓」を調べることにより、着床率が最も高まる胚移植のタイミングを知ることができるのです。
具体的には、分子生物学的ツールとして次世代シーケンサーを用い、子宮内膜の着床能に関連する236個の遺伝子の発現レベルの分析を行います。
子宮内膜の組織検体から抽出したRNAを次世代シーケンサーによって解析し、遺伝子の発現プロファイルから受容期(Receptive)または非受容期 (Non-Receptive)に分類していきます。
受容期前
Pre-Receptive
受容期前というのは、検査した時だとまだ着床の窓が開いていない状態。
要は移植するにはまだ早すぎる状態となります。
そのため今回のERA検査で子宮内膜生検を行った時刻より1日後に胚盤胞移植を行うことが推奨されます。
(プロゲステロン投与後148±3時間)
例えば…
通常の場合:1月1日にプロゲステロンを投与して120時間後の1月5日移植となります。
受容器前と診断が出た場合:1月1日にプロゲステロンを投与して148時間後(120時間 1日24時間)となり、1月6日移植となります。
受容期
Receptive
着床の窓にずれはありません。
子宮内膜生検を行った時刻で胚移植を行うことが推奨されます。
(プロゲステロン投与後120±3時間)
受容期後
Post-Receptive
検査した時だと着床の窓が一度開いて、その後閉じてしまった状態。
要は今回のERA検査で子宮内膜生検を行った時刻では遅い可能性があるという事です。
この場合、新しい子宮内膜生検を行う(プロゲステロン投与で96±3時間)ことが推奨されます。
例えば…上の例でいくと通常1月5日移植です。
受容期後と診断が出た場合:1月1日にプロゲステロンを投与して96時間後(120時間-1日24時間)となり、1月4日で移植の予定で再検査となります。
ERA検査の有用性
エルゼビア株式会社では「ERA検査を行った群の妊娠、移植および累積出生率の統計的に有意な改善を示している」としている。
着床の窓を特定するための遺伝子検査、ERAによって、71%の患者様が1年以内に妊娠し出産しました。
(体外受精における個別化、凍結、新鮮な胚盤胞移植を比較した5年間の多施設ランダム化比較試験)Google翻訳
全く逆のことをあらわしている論文もあります。
Result(s): The live birth rates for the ERA group, 49.62%, and the matched non-ERA group, 54.96%, (odds ratio 0.8074; 95% confidence interval, 0.5424-1.2018) were not significantly different, nor was a difference seen in subanalyses based on prior number of FETs or receptivity status.
結果:ERAグループの出生率49.62%、および一致した非ERAグループ、54.96%(オッズ比0.8074、95%信頼区間、0.5424-1.2018)は有意差はなく、以前のFET数または受容状態に基づくサブ分析にも違いは見られなかった。【Google翻訳】
(凍結胚移植における子宮内膜受容性分析の利点を評価するための傾向スコアマッチングの使用)Google翻訳
これは凍結融解胚移植周期において、ERA検査が生児出生率に与える影響を調査することを目的に単一の大学附属病院で実施されたものとなります。
2014年1月1日から2019年6月30日までの凍結胚移植周期で行われました。
そこでは評価項目に影響を与える複数の共変量を用いてマッチングを行い、ERA患者133人を非ERA患者353人がマッチングしました。
結果はERAグループの出生率:49.62%、一致した非ERAグループ:54.96%
ERA検査の有無で出生率の差はないと評価しています。
EMMA(子宮内マイクロバイオーム)検査(Endometrial Microbiome Metagenomic Analysis)
EMMA検査とは“子宮内膜マイクロバイオーム検査”と呼ばれるもので、子宮内の細菌叢をみる検査となります。
健康な子宮内膜には乳酸桿菌(ラクトバチルス)が豊富に存在し、乳酸桿菌の割合が高いと着床・妊娠率が上昇すると言われています。
子宮内膜における常在菌の種類と割合を調整し、ラクトバチルス属の菌が90%以上を占める人はそうでない人と比べて体外受精での成功率が高いのではないかという論文を発表しました。
(子宮内膜微生物叢が移植の成功または失敗に影響を及ぼすという証拠)Google翻訳
このことから、ラクトバチルス属の菌の割合が、妊娠率・生児獲得率に大きな差があることが示唆されます。
ALICE(感染性慢性子宮内膜炎)検査(Analysis of Infectious Chronic Endometritis)
ALICE検査とは“感染性慢性子宮内膜炎検査”で、子宮内の細菌の中で特に慢性子宮内膜炎(CE)の原因となる細菌を検出します。
慢性子宮内膜炎は不妊症患者の約30%が罹患しているとされています。なかでも反復着床不全や反復流産の方での罹患率は66%に上ります。
ALICE検査では慢性子宮内膜炎の原因菌を検出することで、より適切な抗生剤と治療法を提案することができるのです。
慢性子宮内膜についてはこちらのコラムをご覧ください。
CD138とは?慢性子宮内膜炎の検査と鍼灸治療
子宮環境を調べる検査の一つに「CD138(別名:BCE検査)」があります。これは慢性子宮内膜炎を調べる検査になります。反復着床不全や繰り返しの流産の既往がある女性の約40〜60%に慢性子宮内膜炎があると言われています。検査方法や治療の内容など解説します。
検査の流れ
1.胚盤胞移植をおこなう場合と同じ方法で、ホルモン剤を用いて子宮内膜を厚くしていきます。
2.黄体ホルモン剤投与開始から5日目にピペールと呼ばれている器具で子宮内膜組織を採取します。(約5分程度)
3.採取した子宮内膜組織を検査会社に送ります。結果が出るのは大体3〜4週間後となります。
EMMA/ALICE検査だけを受ける方は、自然周期で検査でも問題ありません。またその場合は、月経周期の15〜25日目に検体採取を行います。
1回の採取でトリオ検査(ERA・EMMA・ALICE)まとめて検査に出すことが可能です。
検査結果によっては、再検査が必要な場合もあります。
費用
トリオ検査は自費となるため、病院により金額が変わりますが、だいたい15〜20万円となります。
病院によってはERA検査のみやEMMA・ALICE検査のみでも行っているところもありますので、気になる方は病院に問い合わせしてみてもいいかもしれません。
事例
ここで当院に来られた患者さんのお話をさせていただきます。
Iさんは何回移植しても着床しないため、試したことのない鍼灸で体質改善しようと思って当院に来て下さいました。
年齢的にも20代の方で、病院の先生も「何回か移植していけば、着床するはず」と採卵そして移植を繰り返し行って延べ5回。
良性胚でも着床しなかったので、子宮の検査をしようと次周期トリオ検査をする予定でした。
お仕事もハードで残業も多かったIさん。身体も疲労がたまっているけど、緊張もしていてガチガチに固くなっていました。
その緊張を取り、リラックスしやすい状態をつくるところから治療が始まりました。
治療を始め3回目。
緊張が緩んできて、肩周りのコリも少しずつ落ち着いてきていました。
そしてついにトリオ検査。
3週間待ってトリオ検査の結果は、
着床の窓はズレているし、ラクトバチルス菌の量も少なく、子宮内膜の炎症も起こっていました。
Iさんとしても「これがけズレて炎症も起こってたら、移植しても着床しないよなと感じた」とおっしゃっていました。
そこから抗生剤を飲み炎症の治療をしていきました。
徐々に身体も力が抜け、リラックスしやすくなってきていました。
「朝一番のしんどい感じがなくなってきた」とIさん自身、変化に驚いていました。
そして移植当日。
ERA検査のズレを考慮して、1日早めの移植でした。
その結果、無事に陽性
初めての陽性判定にIさんは信じられず、家でもチェッカーで陽性が出るか試したとおっしゃっていました。
そして無事に出産されました。
子宮環境も整えつつ、鍼灸で身体の緊張を取ることで着床するためのエネルギーが貯えられたのではないかと思います。
まとめ
トリオ検査とは、ERA・EMMA・ALICE検査をまとめたものとなります。
ERA検査は、最も着床しやすい時期(着床の窓)を調べるものです。
論文によっては1年後の出生率が有意に変わったとされているものもあれば、変わらないとされているものもあり、意見が分かれています。
EMMA検査は子宮内膜の良い菌(ラクトバチルス菌)の割合を調べる検査で、ラクトバチルス菌が90%以上の方は90%以下の方と比べ、着床率、妊娠率、妊娠継続率、生児獲得率が高くなるとしています。
ALICE検査は慢性子宮内膜炎を引き起こす菌の割合をみる検査のことで、反復着床不全や反復流産の方のおよそ66%が慢性子宮内膜炎に罹患されています。
以上により、移植しても着床しない方、繰り返し流産を経験されている方はこの検査をしてみるのも良いかと思います。
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