「移植を何度もしてきたけど、なかなか着床反応が出ない。」
「検査結果は夫婦ともに問題なく、自分自身も冷えや自律神経の乱れなど体調の悪さを感じない。」
「周りで自分より不摂生な生活を送っている人が妊娠していることを考えると妊娠しにくい身体とも思えない。」
「病院からは採卵と移植を繰り返しましょうと言われるけど、このままでいいのか分からない。」
「移植のための準備が大事だと思うけど、着床しやすい身体づくりとは具体的には何?」
こんな風に思ったことはありませんか?
これらは当院に通われている患者様が初診でのカウンセリングでよく伺う話です。
なかなか治療がうまくいかないことが続くと胚移植前も不安が尽きない…ということもあるかと思います。
特に体調が気になる所がないのになかなか妊娠しない。
当院でも「特に体調が悪いというわけではないのですが、なかなか妊娠できません」とお話する方は大勢いらっしゃいます。
しかし、当院では患者様の治療を携わる中で、身体が良くなることで体外受精の結果が改善された方を大勢みてきました。
では「身体が良くなる」とはどんなことでしょうか。
何をしたらよいのでしょうか。
それは自律神経のバランスを整え、血流を促進し子宮環境を改善することです。
それに加えて、
やや早くてスムーズな充実した妊娠しやすい脈。
温かくふっくらした柔らかい妊娠しやすいお腹になること。
これが移植周期で行う鍼灸です。
この記事では子宮動脈の血流が良くなることでどれくらい妊娠率が上がるのか。
また移植までに何回くらい移植鍼灸をを行うと効果的なのか。
いつ着床鍼灸を行うべきかをデータや論文を元に解説します。
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1.もっとも重要な妊娠しやすい身体づくり
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2. 移植鍼灸とは
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2-1 リラックスや血流促進に重要な自律神経
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2-2.血流は身体の温かさにも関係する
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2-3妊娠しやすい脈・お腹とは
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2-4鍼灸施術の効果
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3.移植までに4回以上の鍼灸で妊娠率が上がる
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3-1移植鍼灸の開始時期
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3-2 着床鍼灸との違い
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4身体をキープするポイント
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5.移植に向けてのセルフケア
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5-1 着床を促す食事
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5-2 運動で全身の血流アップ
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5-3質の良い睡眠で移植に備える
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5-4生活習慣のアドバイス
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6.まとめ
もっとも重要な妊娠しやすい身体づくり
なぜ子宮への血流の流入によって妊娠率が上がるのか?
引用の論文は、下に結論を書いていますので読まなくて大丈夫です。
【目的】体外受精・胚移植(IVF-ET)において着床および妊娠成立の過程は解明されていない. 本研究は, ET前の子宮動脈系の血流環境が, 妊娠成立の予知に有用であるか否かを, 前方視的に検討することを目的とした.
【方法】対象は, 形態良好な4細胞期卵を2個移植した41周期(41症例)(妊娠成立群P群;14周期, 妊娠不成立群NP群;27周期)のIVF-ET実施例である. 経腔超音波カラードプラ法によりET前日の子宮動脈上行枝および放射動脈を描出し, その血流速度波形からpulsatility index (PI)を算出して妊娠率との関連について検討した. さらに, 子宮動脈PI値と血清estradiol(E_2)濃度の関連についても検討した.
【成績】(1)子宮動脈PI値(p<0.01)は, P群;2.90±0.74(mean±SD), NP群;3.43±0.60で, 放射動脈PI値(p<0.01)は, 同様に, 2.13±0.55および2.56±0.54であり, いずれもP群で有意に低かった. (2)子宮動脈PI値が3.0未満の場合の妊娠率が64%(9/14周期)であるのに対して, 3.0を超えた場合の妊娠率は19%(5/27周期)であり, 両群間に有意差(p<0.01)を認めた. (3)放射動脈PI値が2.5未満では48%(12/25周期)に妊娠が成立したが, 2.5を超えた場合の妊娠率は13%(2/16周期)であり, 両群間に有意差(p<0.05)を認めた. (4)子宮動脈PI値が3.0未満で, さらに放射動脈PI値が2.5未満である場合の妊娠率は82%(9/11周期)であった. (5)子宮動脈PI値と放射動脈PI値との間には, r=0.734と高い正の相関を認めた(P=0.0001). (6)子宮動脈PI値と血清E_2濃度との間に, r=-0.44の有意な負の相関を認めた(p=0.019).
【結論】(1)IVF-ET実施例において, ET前日の子宮動脈PI値および放射動脈PI値の評価は, 妊娠成立の予知に有用である. 子宮動脈PI値が3.0, 放射動脈PI値が2.5を超えるような循環不全の周期はETには適さない子宮環境であるが, 血流環境を改善することによって妊娠率を高め得る可能性がある. (2)子宮動脈循環は血清E_2濃度の影響を受けている. 血清E_2濃度が低値の場合, 子宮動脈循環不全が惹起され, 妊娠の成立が障害される可能性がある.
日本産科婦人科學會雜誌
49 (2), 81-87, 1997-02-01
一言でいうと、子宮動脈の血流を改善することによって妊娠率を高め得る可能性があるとあります。
こちらは2018年5月から2020年4月までの間に凍結胚移植の30分前と直後に鍼治療を受けたグループと受けていないグループの妊娠率の結果です。
合計 654 サイクルが分析されました。年齢や BMI などのベースライン特性は、2 つのグループ間で類似していました (p>0.05)。
鍼治療 FET グループと非鍼治療 FET グループでは、妊娠率にそれぞれ 66.8% と 56.65% という統計的に有意な差がありました (p=0.003)。
同様に、2 つのグループ間の臨床妊娠率も統計的に有意で、鍼治療グループの臨床妊娠率は 60.6% であったのに対し、対照群では 46.95% でした (p=0.017)。
さらに、PGT を受け、正倍数体胚を移植した患者のうち、鍼治療を受けた患者の妊娠率は 73.93% と、受けなかった患者の 63.29% と比較して有意に高かった (p=0.042)。
PGT を受けなかった患者の場合、妊娠率と臨床妊娠率はどちらも同様で、鍼治療群の妊娠率は 56.41%、臨床妊娠率は 52.56% であったのに対し、鍼治療を受けなかった群ではそれぞれ 52.63% (p=0.55) と 41.4% (p=0.11) でした。統計的には有意ではありませんが、臨床的には関連性があります。
結論
これまでの研究で、鍼治療は血流を促進し、神経系を調整することが示されています。そのため、胚移植当日に鍼治療を行うことで、子宮への血流を促進しながら、リラックスしてストレスを軽減するのに役立つと考えられています。
Fertility and Sterility
結論としては、鍼治療をしたグループの臨床妊娠率は 60.6%。
対照群では 46.95%と有意な差があるとして、 子宮への血流促進と、リラックスによるストレス軽減を指摘しています。
子宮への動脈は足へ走行する総腸骨動脈から枝別れした、内腸骨動脈、そして子宮動脈→弓状動脈→子宮放射状動脈→基底動脈→螺旋動脈と子宮全体に栄養を供給します。
また山口大学大学の論文では、子宮放射状動脈の血流が改善され,VEGFの産生,血管新生や上皮の発育も正常となり,子宮内膜の発育が改善されるとしています。
そのため子宮動脈の血流を改善することが移植のための準備となります。
それに加えて、妊娠しやすい脈やお腹になることが移植鍼灸の目的となります。
移植までに4回以上施術をすることで当院の成績としては約15.5%妊娠率が上がるためです。
(詳しくは「移植までに4回以上の鍼灸で妊娠率が上がる」の項でお伝えします)
ここからは移植鍼灸にはどのようなの効果があるのかを解説します。
移植鍼灸とは(脈とお腹を整えると着床しやすい身体づくりになる)
移植鍼灸の目的は移植に備えた身体作りです。
上記で述べたように
- ・自律神経が整っている
- ・血流が良い
- ・脈が浮いていて少し速くて滑らかな、妊娠中の脈に近づいている
- ・温かくて柔らかく弾力のあるお腹になっている
このような身体にすることで、以前よりも着床しやすい状態に準備をします。
その結果、内膜が厚くなり、受容性が高まると考えています。
では、そもそも自律神経が整い、血流がよく、妊娠しやすい脈・お腹になっているとはどのような状態でしょうか?
リラックスや血流促進に重要な自律神経
「自律神経を整える」と聞くと、睡眠の質がいい、食欲があるなどのイメージがあると思います。
しかし、「自律神経が整っている」がよく分からないという方も大勢いらっしゃるのではないでしょうか?
そもそも自律神経とは身体を調整する機能です。
寝る前は体の力が抜けてリラックスし、心拍は少しゆっくりになる。頭が少しぼーっとして深い呼吸になる。
仕事中は目が冴え、体はテキパキ動くことができる。
このように体は自分の意志とは関係なく内臓の働きは変わります。
これらを調整する機能が自律神経です。
仕事や運動など活動的な時の交感神経とリラックスしている時の副交感神経に分かれています。
しかし現代はこの自律神経のバランスを崩している人が多いと言われています。
自律神経が関与している症状を自律神経症状といいます。
「自律神経の科学 『身体が整う』とはどういうことか」には以下のように書かれています。
自律神経の専門医によれば、代表的な自律神経症状とは循環器系ではめまい、ふらつき、たちくらみ、失神など。これらは、第6章でみてきた起立性低血圧や食後性低血圧の症状でもありますね。頭痛や胸の痛み、首の後ろから肩の痛み、肩こり、疲労感、脱力感、眠気などの症状が現れることもあるでしょう。
消化器系では腹部膨満感、吐き気、便秘、下痢など。泌尿器系では頻尿、尿意切迫、失禁、残尿など。これらも第6章でみた機能性消化管障害や排尿障害などの症状でしょう。生殖器系では勃起障害。発汗系では皮膚の乾燥、汗がとても多い、汗をかけないなどの症状を呈します。
自律神経の科学「身体が整う」とはどういうことか
ブルーバックス B-2229
著者:鈴木郁子
「第7章自律神経から考える『心身を整える方法』―不調の原因を探ってみる」より
数多くの症状が挙げられましたが、慢性的に上記の症状に悩まされる人もいるかと思います。
つまり疲労感がなく、体がすっきりと軽く、胃腸の調子がよく、適度に汗をかき、さっと汗がひくようなお身体は自律神経が整った身体になります。
血流は体の温かさにも関係する
血流とは血液の流れを表します。
そもそも血液はどんな役割があるのでしょうか?
血液はそもそも酸素、ホルモン、栄養などを運び、体温を一定に保ち、病原菌から身体を守る役割があります。
つまり血流が良いということはスムーズにホルモンが子宮や卵巣に送られます。
脳から分泌されたホルモンが卵巣に届き、卵胞が育つと卵胞からエストロゲンが分泌され、育つにつれエストロゲンが分泌され、結果内膜が厚くなります。
上記で述べたように血液は体温を一定に保つ働きがありますので、血流が良い身体とは温かい身体を表します。
全身がポカポカと温かい、血流の良い身体は移植周期に適した状態といえます。
妊娠しやすい脈・お腹とは
上記の「自律神経が整っている」「血流の良い状態」というのは西洋医学的な観点での話になります。
一方、これからお話しする脈とお腹が整う状態とは東洋医学からの視点の話になります。
東洋医学では身体の状態をみる上で、脈やお腹から判断します。
そのため脈やお腹の状態を最も大切にしており、「妊娠脈づくり」をすることで、着床しやすい身体に変わっていきます。
では妊娠しやすい脈とはどのようなものでしょうか?
妊娠脈づくりとは
妊娠脈についてお話する前に「妊娠中の脈」についてお話したいと思います。
妊娠すると脈は変わります。
歴史ドラマの中でも脈を診て妊娠の有無を判断するシーンをご覧になった方もいるかもしれません。
妊娠中の脈は滑脈という、コロコロとした流れがスムーズな脈であり、そして脈拍が妊娠前に比べて少し速くなります。
やや熱を帯びた脈ともいえるのですが、これは身体が温かく、流れが良く、生命力に満ちた状態です。
妊娠前から妊娠中の脈に近づくことで妊娠しやすい状態になると考えています。
妊娠しやすいお腹とは
では妊娠しやすいお腹とはどのような状態でしょうか?
柔らかくふっくら温かいお腹が妊娠しやすいお腹と考えています。
患者様をみていると冷たかったり、固かったり、張りのお腹をされている方が見受けられます。
理想はつきたてのお餅。
目指すべきお腹のイメージが湧きやすいと思います。
脈と同様、お腹も体の状態を表していますが、お腹はご自身でもチェックがしやすいことが特徴です。
鍼灸施術の効果
ではこれまで移植鍼灸についてお話しましたが、実際に鍼灸治療を受けるとどのような効果があるのでしょうか?
鍼灸治療の効果は色々ありますが、ここでは以下のものを解説します。
- ・血液循環の改善
- ・自律神経のバランス調整
- ・ストレスの軽減
血液循環の改善
鍼灸治療をしていると明らかに手首の脈が柔らかくなります。
手首の脈が柔らかくなるということはそれだけたくさんの血液が流れているということ。
しかし、この時に手首に鍼をしているとは限りません。
患者様の身体の状態を診てツボを決めていますが、手首から遠い足先に鍼をしていることも少なくありません。
足先のツボを使って手首の血流がよくなっているということは全身の血流が良くなっているといえます。
つまり、全身の血流が良いということは卵巣や子宮にもしっかり血流が送られており、ホルモンが届きやすくなっています。
そのため、鍼灸治療を受けた後は全身がぽかぽかと温かく感じられる方も大勢いらっしゃいます。
自律神経のバランス調整
当院に通われている患者様で
- ・力を抜いてくださいと言われるけど、どうすれば力が抜けるか分からない
- ・家にいる時はリラックスしたいけど、仕事モードが抜けないでいる
- ・寝つきが悪い反面、食後は気を失うように眠くなってしまう。
こんな症状に悩まされる方がいらっしゃいます。
これらは自律神経のバランスが乱れていることが原因の1つです。
自律神経の乱れの改善は鍼灸治療の得意分野の1つです。
鍼灸治療を受けた後に「力が抜けるってこんな感覚なのですね!」
とおっしゃる方がたくさんいらっしゃいます。
これは普段から交感神経の働きが優位になりやすいため、力の抜き方を分からなかった。
しかし、鍼灸治療を受けたことで副交感神経の働きが優位になりリラックスできるようになったと考えられます。
副交感神経が優位になれば子宮・卵巣など内臓への血流が促進されます。
採卵周期はもちろん、移植周期に自律神経のバランスが整うことは大切です。
ストレスの軽減
ストレスと関係する神経伝達物質は以下の3つです。
ノルアドレナリンは危険を感じたりストレスがおきたりする時だけに分泌されるのではなく、楽しく感じる時も反応します。
適度に分泌されるとちょうどよい緊張感の中、やる気と集中力が高まります。
一方、過剰になると不安感や恐怖を強く覚えるようになり、過度なストレスが継続するとノルアドレナリンはむしろ低下して、集中力・やる気が落ちて無気力無関心になります。
ドーパミンはやる気や幸福感、快感に携わる神経伝達物質です。
適度に分泌されていると、やる気が増して集中力が高まりポジティブになれます。
しかし、過剰になると過食・買い物・アルコールなどの依存につながり、不足するとやる気がおきない、気分が落ち込むなどネガティブな状態になります。
セロトニンは幸せホルモンと呼ばれ、精神を安定して幸福感を得られ、ストレスの軽減や睡眠の質の向上にもかかわります。
そしてセロトニンは幸福感に携わるだけでなく、ノルアドレナリンとドーパミンの調整を担うため、ストレスに対して大きな役割を果たします。
鍼灸治療はセロトニンとドーパミンを増やすことができると言われています。
鍼灸刺激により背側縫線核が興奮し,側坐核のセロトニン放出を促進することから,セロトニンが増加するものと思われる。
一方,鍼灸に関する研究では,動物を中心に鍼灸刺激をおこなった際の,脳や脊髄でのドーパミン量変化が報告されており,側坐核や線条体などを中心にドーパミン量が増加することが報告されている.このことから,薬物と併用しながら鍼灸治療をおこなえば,運動や情動のコントロールに対する有効な手段になりうる可能性は高いものと思われる.
移植までに4回以上の鍼灸で妊娠率が上がる
「一般社団法人日本生殖医学会
HP 2022年
ARTデータブック」より2022年の
ART妊娠率・生産率・流産率が公表されています。
抜き出すと以下のようになります。
年齢 妊娠率 流産率
37 40.3% 24.5%
38 37.8% 26.9%
39 34.4% 30.3%
40 31.3% 32.6%
41 27.4% 37.5%
42 22.2% 43.2%
移植鍼灸3回未満と4~6回の妊娠率の差
対象は2023年から2024年の11月までに新宿のあるクリニックで胚盤胞移植をした患者様60人の結果です。
移植までに最低4回以上移植鍼灸を行うことがおすすめです。
なぜかというと身体づくりをすることで妊娠率が15.5%上がるからです。
そのためなるべく早い段階から移植の準備ができるとよいです。
また生理中であってもいつでも受けることが可能です。
移植鍼灸の開始時期
以上の理由により、移植に向けて着床しやすい子宮環境の準備をしたいと思われたらご相談いただければと思います。
移植日までにあらかじめお身体を診させていただくことで、クリニックでの治療経過や体質、症状、お身体の傾向などが把握でき、よりきめ細かい準備ができます。
また移植日までに受けていただくことで、落ち着いて移植の準備が可能となります。
なお、2023年~2024年9月の期間に、同じく新宿のクリニックで、凍結胚盤胞移植をした方たちの移植直前・直後の着床鍼の結果です。
施術人数 46人
妊娠(胎嚢確認) 27人
妊娠率 58.6%
妊娠された方の平均年齢 39.2歳
こちらの成績は施術回数が8回以上かけて身体づくりを行っています。
そのため平均年齢も少し高くなっていますが、妊娠率も上がっています。
それは下記の図のように回数を重ねるごとに、
・血流の改善
・妊娠脈
・妊娠しやすいお腹
に整ってくるためです。
そのため移植日当日の「着床鍼灸」を行うまでの身体づくりが有利となります。
移植鍼灸のご相談はこちらより承っております。
着床鍼灸との違い
「着床鍼灸」は着床日に合わせて治療を行います。
着床日にこれまで整えてきたお身体を最後の一押しとして治療を行ないます。
ここで大事なポイントはいつ鍼灸治療を受けるかです。
どの胚を移植するかで着床日は変わるからです。
胚盤胞は受精させてから5~6日経過しており、着床直前の状態。
胚盤胞移植を控えている方は移植日当日の鍼灸治療を、初期胚を移植される場合は移植してから何日か後に治療することがお勧めです。
胚とお勧めの鍼灸治療日は以下の通りです。
- ・胚盤胞移植→移植当日
- ・2日目胚移植→移植の3~4日後
- ・3日目胚移植→移植の2~3日後
内膜をベッドと表現されることがありますが、同じように移植鍼灸と着床鍼灸をベッドで例えると以下のようになります。
移植鍼灸→ベッドのマットレスの中身を充実させる
着床鍼灸→ベッドのシーツをよりキレイなものにする
寝心地のよいベッドで過ごすにはシーツももちろん大事ですが、質の良いマットレスが何よりも大事になります。
シーツはすぐに新しいものに取り換えられますが、マットレスの中身を充実させるには時間がかかります。
そのため移植鍼灸を定期的に行うことで胚にとって居心地の良い環境をつくることが大切になります。
諸事情により、着床鍼灸を受けられない方も中にはいるかと思います。
着床鍼灸を受けられないと心配になる方もいるかと思いますが、先ほど述べたように妊娠しやすい脈やお腹になっているかが最も重要。
これまできちんと移植鍼灸を続けられていたのであれば、極端な話ですが着床鍼灸を受けられなくても問題ないといえます。
なお、着床鍼灸に関しては下記のページで詳しく解説しています。
移植日当日のスケジュール|胚盤胞移植直前直後の着床鍼灸
胚盤胞移植のおすすめの着床鍼灸の日は移植日当日です。論文に胚移植前後の着床鍼灸を受けたグループの方が鍼灸を受けていないグループより妊娠率が高いとある。当院でも移植直前直後の着床鍼による結果は、妊娠率:58.6%、妊娠された方の平均年齢39.2歳となります。11時台は移植の方が受けられるよう移植優先枠としております。
身体をキープするポイント
移植前後では子宮にしっかりと血流が巡り、ホルモンバランスが整っている必要があります。
鍼灸治療はそのお手伝いをしますし、また鍼灸治療で受けた効果が少しでも長く継続させるにはご自身で行うセルフケアも重要になります。
鍼灸治療を受けた後、身体は改善しますが、身体は元の状態に戻ろうとする力が働きます。
鍼灸治療を受け始めた段階は特に身体が元に戻ろうとする傾向は強くなります。
そのため、始めはあまり間隔を開けずに鍼灸治療を継続することがお勧め。
週に1~2回のペースで治療を重ね、お身体が定着するようになったら少し間隔をあけても問題はありません。
そして、鍼灸治療で改善したお身体が元の状態に戻りにくくするためにご自身でセルフケアに励む。
こうして着床しやすい身体作りを行います。
移植に向けてのセルフケア
セルフケアには様々なものがありますが、
- ・食事
- ・運動
- ・睡眠
- ・呼吸、温めなどの生活習慣
などが挙げられます。
ここで大切なことはいかに自分に合ったものを選ぶかです。
これらのセルフケア、運動が好きな人は運動に注力したいでしょうし、もともと食事に気を配る方はより一層食事のメニューを考えると思います。
お身体はそれぞれ違うと同時に、取り組むと良いものも異なります。
いきなりたくさんのことを変えるのは難しいもの。
お身体の状態や状況に合わせてスモールステップ(最小限できるところ)からのご提案をしています。
ここでは着床に関わるセルフケアの例をいくつか挙げます。
着床を促す食事
食事に関してはまず、バランスのとれた食事が大前提にあります。
特定の栄養素だけ摂取していても、基本となる栄養バランスが整っていないと効果を発揮することはできません。
バランスの取れた食事というのは色々な視点から見ることができます。
- ・五大栄養素(タンパク質・炭水化物・脂質・ビタミン・ミネラル)
- ・5色(赤、白、黄、緑、黒)
- ・〈ま、ご、わ、や、さ、し、い〉の食材と摂る
これらで食事バランスを整えた上で移植周期にお勧めの栄養素を摂ることが必要です。
それは以下の栄養素です。
では1つずつ栄養素を見てきましょう。
なお、胃腸を整えて、摂取した栄養素をきちんと消化吸収できる力も食事と同様大切です。
消化機能促進にお勧めのへそ灸についてはこちらで解説しています。
身体を作る大本のタンパク質
タンパク質は筋肉、臓器、血液など全身の組織を作る原料。
ホルモンや神経伝達物質もタンパク質を元に作られます。
不足してしまうと代謝が落ち、体の働きが低下してしまうと妊活にも影響を及ぼします。
なお、厚生労働省から発表された「日本人の食事摂取基準(2020年版)」には女性のタンパク質推奨量は50gとしています。
妊娠前から大事な葉酸
ビタミンB群に属する葉酸は赤血球を作り、細胞の生産や代謝に関わるため、体の発育に重要な栄養素。
胎児の先天性異常である神経管閉鎖障害のリスクを減らすためには妊娠1ヶ月以上前から、640ugの葉酸が必要です。
葉酸は色の濃い葉物野菜(ブロッコリー、芽キャベツ、ほうれん草など)に含まれています。
女性に必須な栄養素である鉄分
鉄分には酸素の運搬という役割があり、卵胞ホルモンや黄体ホルモンの合成にも関わります。
鉄分にはヘム鉄・非ヘム鉄があり、吸収率が異なります。
効率的な鉄分摂取にはヘム鉄がお勧めであり、レバーや赤身肉、魚などに多く含まれます。
妊娠前でしたら1日10mgの摂取が必要です。
フェリチンについてはこちらで解説しています。
ビタミンD
ビタミンDはカルシウムの吸収を促進し、免疫にも関わります。
そして現在研究が進み、ビタミンDは生殖にもかかわるとされています。
良質な卵子が育ち、着床させやすくし、流産リスクを低下させると言われています。
ビタミンDは妊娠にも重要である.ビタミンDが 子宮内膜に発現する受精卵の着床に必要な遺伝子 HOXA10 の発現を誘導することが明らかにされてお り21)22),妊娠の成立にもビタミンDが重要な働きを 担うことがわかる.
ビタミンDについてはこちらで詳しく解説しています。
運動で全身の血流アップ
適度な運動は全身の血流をあげ、余分の脂肪を燃やして筋力をアップさせます。
筋力が少ないとインスリン抵抗性を引き起こし、着床を阻害すると言われます。
運動は様々なものがあるので、継続しやすいものを選ぶことが大切ですが、
当院ではウォーキングなどの全身運動や深い呼吸を大切にするヨガやピラティスがお勧めです、
妊活とピラティスについてはこちらで解説しています。
質の良い睡眠で移植に備える
身体を整えるためには良質な睡眠は必須です。
交感神経が優位だと寝つきが悪かったり、眠りに入れても浅くなったりします。
睡眠には自律神経のバランスと神経伝達物質であるメラトニンが深く関ります。
鍼灸治療は「自律神経のバランス調整」で述べたように自律神経のバランスを調整する効果があります。
鍼灸治療直後も「眠くなりました」とお話する患者様が大勢いらっしゃいますし、その日の晩も心身ともにリラックスして深い眠りを促します。
また、「ストレスの軽減」でお話したように、鍼灸治療はセロトニンの分泌を促します。
では、このセロトニンと睡眠はどのように関わるのでしょうか?
セロトニン自体が良質な睡眠に関わりますが、それだけではありません。
セロトニンを原材料にしてメラトニンという睡眠と目覚めのリズムを調整する神経伝達物質が作られます。
そして、メラトニンは睡眠だけではなく、細胞の新陳代謝や疲労回復にもかかわり、卵子の質にも関係します。
卵子の質とメラトニンの関係についてはこちらで解説しています。
つまり鍼灸治療でセロトニンとメラトニンの分泌を増加させることで良質な睡眠を促します。
生活習慣のアドバイス
生活習慣で特にお勧めしていることは身体の温めと深い呼吸です。
身体が冷えているとホルモンがスムーズに卵巣・子宮に届きにくくなり、子宮環境が悪化してしまいます。
また、深い呼吸は自律神経のバランスを整えます。
当院に通われている患者様の中にも、普段から呼吸が浅い自覚があります、とおっしゃる方は多くいらっしゃいます。
湯舟にしっかりつかり、温かい飲み物を召し上がり、深い呼吸をしたリラックスタイムを作ってみてはいかがでしょうか?
まとめ
移植周期に入り、何かできることはないかと思い鍼灸治療を始められる方は大勢いらっしゃいます。
移植周期の身体づくりのポイントは自律神経のバランスが整い、血流を良くする。
それに加えて、「早くてスムーズな充実した妊娠しやすい脈」「温かくふっくらした柔らかい妊娠しやすいお腹」
になることです。
当院では移植までに4回以上の鍼灸治療を重ねた方の方が妊娠率が高くなっています。
これまでご自身でもお身体作りに励まれていると思いますが、皆様の妊娠する力を少しでも手助けできたらと思います。
お身体だけでなく、精神的なサポートも当院では大切にしておりますので、いつでもご相談お待ちしております。
この記事の著作者
鍼灸師 あんまマッサージ指圧師 楠本 敦子
より詳しい内容は
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